「オフショア開発」と「コンテキストをあわせる」

コンテキスト(コンテクストとも言う)は、文脈や文章などの前後関係、事件・出来事の事情や背後関係、と定義されている。わりと範囲の広い言葉で、自分自身は共通認識や文化が異なるときに「コンテキストが違うのでウンヌン」と言う使い方をすることが多い。

【文脈/コンテクスト】 に、コンテキストとは何かを理解するのに、とてもわかりやすい説明があった。

 <コンテクストのすり合わせ>とは特に、演劇において使われている用語です。
例えば、劇のとあるシーン。役者Aは自分の演じるキャラクターが、そのシーンで怒っているのだと思った。しかし役者Bは、そのシーンで役者Aの演じるキャラクターは、悲しんでいるものだと考えてしまった。
このまま舞台練習を開始しても、役者AとB、ふたりの演技は食い違ったものとなってしまいます。ですから事前に、脚本その他演劇全般に対する解釈を、皆の間で一致させる作業が必要となってきます。
解釈、すなわちコンテクストを共有・一致させる。このような作業が、<コンテスクとのすり合わせ>なのです。

日本は高コンテキスト文化と言われる。最近はそうでもないのかもしれないけど、おおよその価値観が人や地域によって大きく異なることは少なく、「空気を読む」ことで、お互いが求めてるものを理解することができる。一方、アメリカなど多くの人種が入り交じっているような国は低コンテキスト文化とされている。そもそも読むべき空気が無く、価値観もまちまち。両者の差異は本の厚さでも比較することができる。低コンテキスト分化の国では、経緯や背景、心理状況などを事細かに記載することで、まずコンテキストのすり合わせから入る必要がある。

同じような職種の人のように、お互いに同一のコンテキストを持っている同士では、非常に楽にコミュニケーションできる。お互いにお互いの空気を読めるため、それをわざわざ伝えなくてもその背景が共有できてしまう。これはいっけん良いことのように思えるけど、この「コンテキストをあわせる」という能力がまったく育たなくなってしまう。

オフショア開発の課題の一つとして、「日本側の要件・要求が正しく伝わらない」ということがある。これはこの高コンテキスト文化でのコミュニケーションが主な原因だと思う。異文化間でコンテキストをあわすことは難しい。いや、おそらく無理だ。欲しい物、つまり品質目標も含めて「要件をすべて書き切る」必要がある。

面白いのは、「いい感じによろしく」と、他人にある程度丸投げてやってもらっていた人にオフショア開発向けの要件定義書を書かせてみると、いくら頑張っても「要件を書き切る」ことができない。しょっちゅう、望んでいたものと違うものが出来上がってくる。書かせてみることで、内容についてどれぐらい網羅的に考えているかの判定に使うことができる。誤解されがちだけど、頑張っても「伝わらない」のはコミュニケーションスキルの問題ではない。

なるべく、コンテキストの共通点が少ない人と話すことで、このあたりの能力を伸ばすことに繋がってくる。例えば同じ会社の中なら「まったく技術の分からないセールス」と「技術者」のように、専門用語が通用しない相手がいい。技術がわからない人に対して、技術の話をわかりやすく話すという経験を積みまくることで、このあたりのスキルがすごく身についた。